菅 木志雄 Kishio, SUGA

  1944年岩手県生まれ
1967 第11回シェル美術賞を受賞
1968 多摩美術大学絵画科卒業、初個展
1978 第38回ヴェネチア・ビエンナーレ
1981 サンパウロ・ビエンナーレ(ブラジル)
1986 「前衛美術の日本」ポンピドゥーセンター(パリ)
1994 「戦後日本の前衛美術」横浜美術館からグッゲンハイム美術館(ニューヨーク)へ巡回
1995 「1970年−−−物質と知覚、もの派と根源を問う作家たち」岐阜県美術館
1997 「菅木志雄展」広島市現代美術館、伊丹市立美術館、神奈川県民ホールギャラリー、千葉美術館へ巡回
1999 「菅木志雄−スタンス」横浜美術館
2005 「もの派−再考」国立国際美術館
「揺らぐ体空 菅木志雄インスタレーション」岩手県立美術館

  1970−1980年代にかけて日本美術界を席巻した「もの派」の中心人物の一人であり、現在までその基本的な態度を持続・発展させてきたただ一人の作家とも言われる。木材や石、金属、ガラスなど加工を極力抑えたシンプルな素材を展示空間に配置、立体・平面を問わず、ものとものの関係、ものと空間の関係、くうかんとそのものの関係など、あらゆるものは関係性をもつという認識を制作の基本としている。

「人間のまわりにはあらふるものがありながらいかなる<かたち>も存在しない。<かたち>がなければ、なにもみることがない。人間が欲するとき、<はじめて><かたち>がみえ、認識される。<かたち>は人間の意識の流れにあり、必要に応じて、<かたち>となり、世界の外でみえる。」菅木志雄

菅木志雄の作品は、設置された周囲の空間まで派生していく力を持つ。「耕空」という耳にも響きの良いこの作品は、見る者に身体が空高く舞い上がり地上を見下ろしているような、とてつもない空間の拡がりを感じさせる。成長期に人は高いところから落ちる夢をしばしば見るが、それは墜落の感覚とは異なり、むしろ周囲が拡散し急上昇していくようなスピード感に満ちている。黙して動かぬこの作品にも、同じようなイリュージョンがありはしないだろうか。

text:naoko sakurai